弊社meleapは、「スポーツをつくる」という珍しいことをやっているわけですが、これはスマホゲームを作るのとはわけが違います。ゲームを作ったことがある人は多いと思いますが、スポーツを作ったことのある人は、おそらくほとんどいないでしょう。
スポーツの特徴として、まず道具が特殊です。ボールやラケットなど日常生活で手にしないものを使い、面白い体験を生み出します。また、体を動かすため、狭いスペースではプレイできません。ある程度の広さが必要となります。仲間と一緒にプレイするというのも、1つの特徴です。
では、いいスポーツとはどんな競技なのでしょうか?どうすれば新しいスポーツが普及するのでしょうか?そもそも、新しいスポーツにはどのようなものがあるのでしょうか?
例えば、「ダーツ」や「ラクロス」は比較的新しいスポーツだと認識されていますが、その歴史は以外に古く、数百年前から兵士などによって楽しまれてきました。最近話題の「バブルサッカー」などは、サッカーを改造し、レジャーコンテンツとして形になった事例です。水圧で空を飛ぶ、で有名な「フライボード」はまだ競技としては成立していませんが、スポーツの原型になるような新しい体験を生み出した事例です。
このように歴史を振り返ると、スポーツが競技として成立するまでには、少なくとも数十年かかっています。そして、技術を組み合わせることで、非連続的な新しい体験を生み出すこともできるとも言えます。フレイボードもその一例ですし、HADOも同じです。
一方で、「ingress」のように(スポーツというよりもゲームの領域ですが)、スマートフォンを使い、数年で1000万人近いユーザーを獲得できた競技もあります。スマートフォンという誰もが持っているツールを使うことで参加のハードルが下がった事例です。
では、これからのスポーツデザインに必要な要素とはどんなものでしょうか?
快感をデザインする
まずは、「その競技が面白いかどうか」が重要です。当たり前ですが(笑)。では何があれば面白いと感じるのでしょうか?ゲームデザインのノウハウなどは沢山あると思いますが、最も重要な要素は、「快感を感じるかどうか」だと思います。サッカーでボールを蹴る時のヒット感、野球でホームランを打つ時の感覚、スキーで滑降時に感じるスピード感、これらのように癖になる快感があれば、もう1回やりたくなります。もちろん戦略性やジレンマ性なども重要ですが、それは根本に「快感」があってのことだと思います。これはスポーツに限らず、釣りやフェスなどのレジャーでも、ゲームでも言えることです。もちろんテレビゲームとは違い、スポーツは体全体を使ってやるものなので、音、振動、感触、映像、風など様々な要素で「快感」を生み出すことができます。
基本的には誰でもできるが、限られた人しかできないこともある
どんな運動音痴な人でも基本的なプレイができれば、ターゲットの幅が広がります。例えば、フィギュアスケートをできる人は限られていますが、ボーリングは力がない人でも、運動神経がない人でも基本的なプレイはできます。だから子どもから高齢者まで、会社帰りのサラリーマンも楽しんでいるのです。ただ、誰がやっても同じ結果、というのでは面白くありません。熟練された人がやれば突出したパフォーマンスを出せる、という競技でないとやり込むモチベーションが続きません。熟練度が結果に反映されるのであれば大きな大会を開催でき、世界中のファンの注目を集めることができるのです。
手軽にできる
「スポーツの普及」にあたり、最も重要なのが手軽さです。どんなに面白い競技でも、道具を揃えるのに数十万もしたら、競技を普及させるのは難しいでしょう。一般的なスポーツを考えれば、2〜3万円、できればタダで参加できたら最高です。その意味で、既に普及しているインフラ的存在を使う、というのは重要だと思います。例えばスマートフォンやネット環境、車、自転車など。もしくは家にある家具でもいいかもしれません。既に皆が持っているもので参加できるのであれば、ターゲットの幅が圧倒的に広がります。また、「やりたいときにやれる」というのも重要なポイントです。サーフィンやゴルフは限られた場所でしかできませんが、もし日常的な空間でできるようになれば、参加回数は圧倒的に増加します。
観客者も楽しめる
スポーツを発展させるには、プレーヤーのことだけ考えていてもダメです。競技を観戦する人も楽しませなければいけません。スポーツはやらなくてもいいけど観戦したい、そんなファンを作れる仕組みがあればサポーターの層も拡大していけます。例えば、フィギュアスケートなどはその傾向が強いのでないかと思います。みんなフィギュアスケートなんて普段しないですよね。でも、浅田真央選手の羽生選手の試合は見ます。フィギュアスケートの事例を考えると、選手のブランディングというのも重要な要素だと感じます。誰もが憧れるようなアイドル的な選手をつくってもいいかもしれません。また、少しジャンルは違いますが、「逃走中」や「サスケ」などのテレビ番組も良い例だと思います。これらは、プレーヤーというよりも、観る人をいかに楽しませるか、という点に注力しています。このように観て楽しむファン・サポーターの層を獲得できると、スポンサーを付けられますし、放映権的な概念も生まれ、市場が大きくなるのです。
広がりがある
その他にも、様々なシーンでの利用を広げていくことで競技は発展していきます。例えば、合コンで使える、会社のレクリエーションで使える、義務教育に導入される、観光コンテンツとして応用できるなどです。また、ゲームや映画、アニメなどとのコラボをし、クロスメディア展開をするというのも面白いと考えています。
スポーツを普及させるのは決して簡単なことではありませんが、技術と仕組みによって、これまでにない新しい発展の仕方ができると考えています。今でもスポーツ市場は巨大ですが、今後、テクノロジーを使った新スポーツにより、さらに大きく発展していくでしょう。私達はその先端を突っ走っていきたいと思います。