CESに行って今後のAR/VRについて考えてみた

CES2017に行ってきました。

CESとは、正月にラスベガスで行われる世界最大級のC向けデバイスの見本市です。会場はバカ広くて、一通り歩くだけで疲れます。1日じゃ絶対無理です。全部合わせると幕張メッセの5倍くらいあるのかと思うレベルです。(実際どの程度なのかはわかりません)

その中でVR/ARを中心に見て、考えたことをまとめました。

 

tango対応スマホは売れるのか?

空間認識機能のtangoを搭載した端末が出てきました。LenovoのPhab 2 Proに続き、CESではASUSからZenFoneAR(tango+day dream対応)も発表。

tangoは空間を認識することができる次世代スマホで、モーショントラッキング、エリアラーニング、深度認識など今までにない体験が可能な端末です。

では、果たしてどれだけ売れるのか?キラーアプリは何になるのか?

現在、tangoのアプリストアにはゲーム・家具の配置シミュレーションアプリなどあるが数はまだ多くない。そもそも、わざわざスマホをかざしてみるほど面白いものがあるのか?

確かにインテリアシミュレーションやエンタープライズ向けのシミュレーション、知育アプリなどのニッチなマーケットではtangoの機能は使われると思うが、これだけだとマスには広がらないと思う。ウェアラブル化して常にカメラで周囲の空間を捉えて入れば、機械学習による提案やナビゲーションなどやれることも幅が広がるが、そういうわけにはいかない。街中で隙間時間を潰したい時にわざわざスマホをかざすとは思えない(もちろんかざす人もいるけど)。バーチャルペットを飼うのにいちいちスマホはかざさない。「かざす」という面倒な行為を超える面白さを提供し続けるのは難しく、それを前提にするならtangoを必要とする時間はあまりないだろう。なので今のままではtangoはあまり売れない、数千万台レベルには届かない。

ただ、「写真・動画を撮る&共有する」というアクションはSNSの発展とともにさらに活発化しており、その体験にイノベーションを起こせるのであればマスにリーチできるのではないかと思う。それがtango(もしくは他のAR対応スマホ)のキラーアプリになるのではないか。写真を撮るときは必ず「かざしている」わけだし、その行為にスムーズに入り込めればチャンスはありそう。例えば「人の体・動きを認識し、それを切り取る」機能があれば写真や動画に新しい変化が生まれてくると思う。顔認識でスノーが爆発的な広がりを見せたように、世界の10〜20代は積極的にそれを使う。そして、たぶんその機能はいずれ市場に出てくると思われる。

 

tango + Day dreamで可能性が広がる

そしてもう1つの切り口としてきになるのがモバイル VR/ARとしての動き。実際にZenFoneARはDay dreamも対応しており、モバイルVRを提供する前提で作られている。だからだと思うが、端末の重量も170gと軽い。正直、Phab 2 Proは重くて頭に装着したいと思わないが、170gであればギリギリ被ってもいいかなと思う。tango + Day dreamなどのようにヘッドマウント前提で考えていくと広がりがあるのではないかと思う。毎日1回、もしくは週に1、2回、HMDにスマホを差し込み、特別な体験をする。ヘッドマウント系のVR/ARにはそれをさせるだけのポテンシャルがあると思う。コンテンツの充実度やインタラクティブ性の進化の話もあるので、tangoとDay dreamが揃っていればすぐに売れるわけではないと思うが、今後の可能性の1つとしてはあり得えそう。

CESでは、他にもファーウェイの「Mate 9 Pro」、「ポルシェデザインMate 9」、ZTEの「AXON 7」などDay dream対応をするスマホが発表された。Day dreamは売れ行きが良くないという話もあるが、モバイルVRの市場自体は成長していくし、非常にチャンスがあると思う。かなり強引にプロモーションしているおかげだろうけど、GearVRは500万台以上出荷しているらしい。

 

モバイルVRは360度映像からスタート

モバイルVRは、まずは「映像体験」から市場はスタートしている。360度カメラも進化してきたし、街中にVRシアターのような映像体験ができるスポットも増えてきた。

現状、モバイルVRではヘッドトラッキング・手によるコントロールの質が低いので動きのあるゲームやインタラクティブコンテンツには向いていないが、映像コンテンツも少しずつ充実してきた。

CESでは、リコーからも「RICOH R Development Kit」が出たし、データ通信量という課題がありつつも360°映像の進化は進むと思われる。

強いキラーコンテンツがあるわけではないが、VRの最初の入りとしては他のコンテンツに比べるとアプローチしやすい。コンテンツ次第でウケるものも沢山あると思う。例えば好きなアイドルの360度映像があればファンは買う。もしくはハイエンドと同じように、まずはロケーションベースのビジネスから広がっていくのではないかと思う。「VRシアター」はその領域からすでにスタートしている。

 

Inside-Out式のトラッキングシステム

モバイルVRとハイエンドVRとでは「画質」と「インタラクティブ性」に差があるが、「インタラクティブ性」の改善に関して新しいチャレンジが出てきている。CESでは特にinside-outの傾向が強く感じられた。

例えば、Usensという会社はスマホの前面に深度センサーを装着し、それによって手の動きを捉える仕組みを作った。これはleap motionと同じ仕組み。

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他にも、Ximmerseという会社はHMD前面につけたステレオカメラでコントローラーをトラッキングしている。

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ANTVRはスマホではなく専用機だが、モバイルHMDの前面下部についているカメラでコントローラーの球をトラッキングする。

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Chirpは超音波でコントローラーのトラッキングをするというシステム。HMDの中に入っているのは、androidスマートフォン。

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この辺のデバイスは中国メーカーが圧倒的に多い。

また、中でも個人的に最も注目しているのはintelのProject Alloy。これもスマホではなく専用機だが、HMDの位置と手の動きをトラッキングすることが可能。

また、XimmerseNOLOは、Outside-In方式での位置トラッキングも同時に出している。部屋のどこかにセンサーを1つ置き、それによってHMDやコントローラーの位置を捉えるという仕組み。セッティングは非常に簡単ですぐにスタートできる。ただ、やはりセンサーを背にするとトラッキングが止まってしまうので、動きはある程度限定される。

このように、ハイエンドとは別にモバイルVRの進化が続いている。現時点で完成度の高いプロダクトがあるわけではないが、1〜2年後にモバイルVRの市場自体が成長していくのは間違いないと思う。インタラクティブ性が上がることでコンテンツの幅が広がるし、直感的に体を使う面白さも出る。HADOの目指す「テクノスポーツ」のビジョンとも合っている。

 

VIVEの進化

一方で、ハイエンドVRといえばPSVR、HTC vive、oculusなど。特にHTC viveは今年に入って新しいニュースを発表しました。今までもviveはルームスケールによって動き回れるVRを強みを出していたが、今回新しく発表されたvive tracker、無線キットによってさらにそれが加速していくと思う。他にも、viveはviveportというプラットフォームも開始。これによって月額制でコンテンツを自由に楽しめるようになる。ただ、一般家庭向けで見るとPSVRの圧勝なんじゃないかな。その分、viveはアーケードが強い。中国、日本でもviveを使ったアーケードはかなり増えてきたし、HTC自身も2017年に5000箇所の導入を目指すと言ってる。今後、アーケードにおいてviveは強くなっていくだろう。ただ、HADOのように8〜10人の複数人プレイは難しいだろうし、子供向けにも提供は難しい。VR全般に言えるが、アーケードを考えた時、年齢制限がかかってしまうのはかなり痛いと思う。

ちなみにアーケード型コンテンツは、大前提としてコンシューマー型では体験できないような体感度の高いコンテンツが求められる。振動などのフィードバック、仲間との協力プレイ、体を動かす楽しさ、銃やバットなどのものを使う面白さなど。その体感度をアピールし、「やってみたい!」という気を起こさせる。そして、その次に大事になるのが「何度もやりたくなるか」ということ。リピーターをつけ、ビジネスとして継続させる。今後、同じコンテンツが街に溢れてくるわけで、開発会社としてはリピート性が重要になってくる。もちろんHADOもそれらを意識して作っている。

 

ARグラスはまだ数年先

CESではシースルー型のARグラスもいくつかあった。例えばODGもかなり大きなブースを構えて出展していたが、エプソンのmoverioと大して変わらず、業界を変えるような革新さは見られなかった。個人的にはmagic leapとHololensに期待しているが、C向けに普及するようなものができるにはあと4、5年程度かかるのではないかという印象。ゆっくり待っていたい。

 

まとめ

  • ARスマホによるカメラアプリの進化に期待
  • tango + Day dreamで可能性が広がる
  • モバイルVRのインタラクティブ性が進化してきた
  • C向け、アーケード向け、共に体を使ったエンタメコンテンツが増える
  • viveはアーケード市場でリードしている
  • シースルー型ARグラスはまだまだ数年先

 

その他、面白かったもの

SharkStream。体に17個の9軸センサーを装着し、体の姿勢や動きを認識する。Xsenseよりも安く作れるらしい。今は有線だけど今後は無線化を目指すみたい。

kino-mo。回転するプロペラに映像をプロジェクションするデバイス。1機3500ドルするらしい。

パナソニックの広視野角220度のHMD。体験しましたが、220度ってすごい。水平視野に視覚なし。これに慣れたら他のHMDに戻ってこれない。

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DLODLOのVRグラス。めっちゃ軽い。

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衝撃のフィードバックがあるベスト。腹回りが大きく設計されていて、私が着るとガバガバだった。

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father ioの実機。基本的に位置トラッキングを必要としないレーザータグ的な発想のセンサー。赤外線発信機と受信機は入っている。後ろから狙っても検出できるらしいが、その精度はわからない。

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cerevoのVRデバイス。足で踏んだ触覚を表現できる。

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音楽のリズムに合わせて振動するバンド。

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上下左右に引っ張る力を感じさせる触覚デバイス。

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体の動きを捉えるスーツe-skin

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シュールなgear VRアトラクション

周囲に配置されたマーカーを見て自動運転する車

viveでロッククライミングするゲーム。meleapの安達くんも同じくロッククライミングゲームを作ったが、そっちは現実ではありえない障害物を登っていく体験ができる。ぜひ皆さんもご体験ください。

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